声もしなければ、物音もしない部屋。

この部屋だけ使われていないのだろうか? そんな考えが頭を過る。

 

そっとドアノブに手を掛け、静かにドアを開く。

 

部屋の中には、窓の外を見つめる、ひとりの女性の姿があった。

空を見ているのか、木々を見ているのか、それとも何も見ていないのか。

扉が開いたことに気付いた様子も無く、彼女は窓の外を見つめたまま、動かない。

 

近付いて声をかけると、緩慢な動作でこちらを振り向いた。

深い蒼の髪が揺れる。灰銀の、月を思わせる瞳は、何処か茫とした色を宿している。

 

「…アーニャの話していた、旅人…だね」

何か用、と、感情の浮かばない声は続けて、無表情のまま、やや小首を傾げる。

 

さて、どうしよう…?

 

>>話を聞かせていただけませんか?

>>何でもありません、大丈夫です